村上建築設計室とリノベーション

私たちは事務所設立後の早い段階で都心のマンションリノベーションの依頼を受けました。

当時はまだ工務店もマンションリノベーションの経験があるところがほとんどなく、

高級マンションでありながら解体したら床一面に水が溜まっていたなどビックリの連続で、

現場監督や職人さん達とあれこれ考え、工夫しながらリノベーションに適した工法を探っていきました。

当時は建築家が積極的にリフォームをやるという風潮がなかったのですが、

家が完成してみると、既存の部屋からは想像がつかないほどよく変化し、

新築以上に質感が高く魅力的で、使い勝手もいいものになりました。

そして、今後は古くなった設備や内装の更新が必要なマンションがたくさん出てくるし、

いい環境に住んでいただくことは都市部で働く人々のためにもなると思い、

マンションリノベーションを積極的に手掛けるようになりました。

何件か物件を重ねてリノベーションに適した工法や手順などが安定して見えてきたころ、

日経ＢＰ社からマンションリノベーションの特集をやりたいというお話をいただいて、

日経アーキテクチュアで「マンション住戸改修術」という連載をやらせていただくことになり、

マンションリノベーションの一連の流れを解説させていただき、

その後、書籍も多く執筆させていただきました。

現在ではリノベーションブームが訪れ、さまざまなスタイルに再生された空間が出てきましたが、

今後ますます当たり前の間取りや建材に囲まれることなく、

より多くの人々が自然で豊かな空間で暮らしていただけることを願っています。