Air conditioning 冷暖房について
建物と空調

空調(空気調和設備)は今の建築に欠かせないものとなってきていています。
冷房か暖房を常につけてるオフィスビルがあったり、地域冷暖房など空調を使うことを前提とした街づくりも進められていますが、本来空調などない世界に生きてきた我々は、空調に頼る前に空調設備を入れなくてもある程度快適に過ごせる状況を作り出せないものでしょうか?

東京の町田市にある「もみじの家」は鉄筋コンクリート造で吹抜もありますが、基礎から天井まで包んだ外断熱や中空層をとってかけた屋根を設けたり、床下には水の槽を設けて深夜電力を使用した低温の床暖房を採用し、開口部は木製断熱サッシなどを採用したため、以前施主が住まわれていた断熱材のない木造の家と比べると、床暖房が入っていますが真冬の朝で室温が約20度上がりました。また夏の日中は直射日光が入らないように軒を出したためかなり涼しく、以前の家では鉄板焼の鉄板の下にいたような状態も今では冷房をほとんどつけることもなく、年間通じて空調コストが大幅に安くなったそうです。

沖縄の伊江島にある「イエノイエ」については、一般的な沖縄の家は空調を日常的に使用するそうですが、軒を深く出した傾斜屋根に中空層をとって素焼きの瓦を葺いたり、断熱材がついた中空コンクリートブロックを陸屋根に敷き並べ、室内は逆梁にして熱気が天井に溜まらないようにしたため、真夏の昼でも洞くつの中に入るようで、余程湿気がひどくない限り風さえ吹いていれば空調はいらないそうです。

その土地の気候を考慮して躯体の段階から空調をあまり使わないですむように計画すると、ゼロとはいかないまでもかなり空調コストがおさえられ、環境に対する負荷も減るような気がします。

最近の高層ビルを見ると全面ガラス張りで、開く窓なんてなかったりしますが、夏は暑そうだし(実際暑いとの話を聞く)、冬は寒そうです(ビルによっては結露しているように見える)。
残業時や休日出勤時など、空調が効かなくて苦しいという話も聞きますが、何かの事情でエネルギーの供給が長期間止まってしまったらどうするのでしょうか?

平和とエネルギー供給は永遠に続くとの判断なのでしょうが、他人事ながら心配になってしまいます。

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暖炉

揺れる炎 薪の香り パチパチとする音 体の芯から暖まる熱・・・

暖炉は煙突掃除や薪の管理など、少々手間のかかることもありますが、炎には飽きることのない楽しさがありますし、なにか原始的な喜びを感じるような気もします。

代官山の「パッション」というフレンチレストランでは、大きな暖炉を使って美味しい肉料理を調理してくれたり、最近のイタリアンでは薪釜で美味しいナポリピッツアを焼いたり、その他、仕様によっては陶器を焼いたりパンを焼いたりと、空間を暖めるだけでなく、いろんなこともできますね。

「casa della casa」で既製品を入れずに壁に納まる暖炉を設計して作ったときに、都心では暖炉のある家があまりないのか、役所の人が確認申請時にどう対応していいのか悩んでしまいましたが、吸気と排気の計画、不燃の対策、煙突の仕様(←法的に関係があります)、各部の寸法の割合、炉や煙突の保温対策、煙り棚の設置、しっかり作れる職人さん探しなどをやれば、問題なく燃える暖炉を作ることが出来ます。
設計時は暖炉は時々火を灯すくらいなので小さくてもいいと言っていたクライアントは、今では料理にも使う程で、こんなに使えるならもっと大きくしておけばよかったと言っています。

暖炉がない家でも床に炉を設けてみたり、七輪で炭火を楽しんだり、ロウソクをちょっと灯してみるのもいいのではないでしょうか。
テレビ中心の生活の中に炎を中心とした団欒の場がうまれるかもしれません。

しかし、ダイオキシンや地球温暖化などの環境問題のこともあるので、あまり調子にのって燃やさないで程々に楽しみましょう。
それと火の用心と換気は忘れずに。

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床暖房


日当たりがそれほどよくなかったり吹抜があったりする家や、
石やタイルなどのお風呂場などでは好適品の床暖房。
足下が暖かいと他が寒くてもなんとかなるので、エアコンディショナーのように暖かい空気が天井を暖めるばかりにもならず、床暖房だと床からの輻射熱でも暖まり床上から天井までほぼ均一な温度になるので、頭が暑くてぼーっとしたり足が寒いことがなくなっていいと思います。

床暖房の場合は、高温で部分的に暖めるより、低温で広い面積をあたためるのが理想的です。
高い温度ですと低温やけどしたり床材や家具などが熱でやられてしまう心配がありますが、体温前後ならずっと触れていても心地よいし、床暖房対応の無理したフローリングでなくても使えたりします(ただし各自の責任で)。
その場合敷設面積が狭いと暖房設備が別に欲しくなることもありますが、床の8割以上くらい敷いてしまえば空間全体がなんとなく暖まります。

しかし、床暖房をだた設置してガンガンつけていると、床暖房の光熱費が住宅でも月4万円とか驚くほど高くなってビックリしたり、人工的な建材を床暖房で暖めると熱で有害物質が室内に充満する場合があるので注意が必要です。

最初から床暖房を組込んで家を建てる場合は、深夜電力や灯油、ガス、日光など、その地域に応じたコストの安い熱源を採用し、外断熱と併用したり水やコンクリートなど熱容量の大きい物を利用して積極的に蓄熱すると、ランニングコストがかなり安くなると思います。
床材も足が触れて気持ちのいい物で、熱を加えても有害物質が出ない自然素材やタイルなどで、熱にも対応する物が適していると思います。

床暖房が設置されていないけれど床暖房みたいにしたい人は、リフォームをすることも考えられますが、ホットカーペットを敷き、その上に良さそうな敷物を敷いてしまうというのもひとつの手です。
籐のゴザを敷いたり、インド綿のラグなどを敷いたりと、気分によって仕上げが変えられるし、いかにも電気メーカーが作りそうな化繊で出来ていたり変な柄があるような物ではないため、インテリアを邪魔するようなこともありません。
なかなか床暖房本来の家全体がなんとなくあたたかいとまではなかなか行きませんが、それなりに心地のいい床暖房にはなると思います。
その場合も低温火傷や床材への影響、敷物の材質など床暖房と同じように注意してください。

ただ、快適性ばかり求めないで床暖房なんかせず、冬は冬らしく冷たい床を楽しむのもいいと思います。
京都の禅寺のお坊さんが言っていましたが、冬の冷たい木の床で毎日修行していると、だんだん慣れてきて暖房に頼らなくても平気な丈夫な身体になるそうです。

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東京都港区北青山の建築設計事務所・村上建築設計室